多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズ
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白内障手術では、濁った水晶体を取り除いた後に人工の眼内レンズを挿入します。 以前は「白内障を治す手術」でしたが、現在では「どのような見え方で生活したいか」を考える時代になりました。
当院では保険診療で使用する眼内レンズを用いて、術後の見え方について継続的に検討しています。
その結果、多くの患者様が遠方から中間距離までを快適に見ることができる一方で、ひとつ明らかになったことがあります。
それは、
30cm前後の近距離視は、どうしても眼鏡が必要になることが少なくない
ということです。
こうした日常生活は快適でも、
といった作業では老眼鏡が必要になる場合が多くあります。
そこで選択肢となるのが、多焦点眼内レンズです。
多焦点眼内レンズは、遠方だけでなく中間距離や近方にもピントを分配することで、眼鏡への依存を減らすことを目的としたレンズです。
特に、
という方に適しています。
もちろん万能なレンズではありません。
メリットだけでなく、デメリットも理解したうえで選択することが大切です。
多焦点眼内レンズで最も重要なデメリットが「ハロー・グレア」です。
夜間に街灯や信号を見ると、その周囲に輪がかかって見える現象です。
光がまぶしく感じたり、光がにじんで見えたりする現象です。特に夜間運転時に自覚しやすいことがあります。
術後しばらくすると脳が慣れて気にならなくなる方が多いものの、完全に消えるわけではありません。
そのため、
では慎重な検討が必要です。
当院では現在、多焦点眼内レンズを主に2種類に絞っています。どちらも乱視矯正タイプ(トーリックレンズ)をご用意しています。
PanOptixは世界で最も多く使用されている三焦点眼内レンズの一つです。
そして2025年、新世代モデルとしてPanOptix Proが登場しました。
従来モデルの優れた近方視力はそのままに、Alcon社独自のENLIGHTEN NXTテクノロジーにより光利用率が88%から94%へ向上し、光散乱は約半分まで低減されています。コントラスト感度の改善も報告されており、見え方の質はさらに向上しています。
実際にPanOptix Proは、
において非常に高い眼鏡離脱率が期待できます。
一方で、PanOptix Proは三焦点レンズであり、光を複数の焦点へ振り分ける回折構造を利用しています。そのため改良されているとはいえ、夜間のハロー・グレアを完全になくすことはできません。
眼鏡依存を最小限にしたい方にとって、現在もっとも完成度の高い選択肢の一つと考えています。
一方で、
という方もいらっしゃいます。そのような方のために当院で採用しているのがPureSeeです。
PureSeeは従来の多焦点レンズとは異なり、回折格子を用いない非回折EDOF(焦点深度拡張)レンズです。独自のOptiCurveテクノロジーによって焦点深度をなめらかに広げる設計となっており、光を複数の焦点に分割しないため、ハロー・グレアの発生を最小限に抑えることができます。
また臨床試験では、
が示されており、近年非常に注目されているレンズです。
ただし近方視力についてはPanOptix Proほど強くありません。一般的には50cm程度までの見え方は良好ですが、細かな文字や30cm前後の作業では老眼鏡が必要になることがあります。
|
PanOptix Pro |
PureSee |
|
|---|---|---|
|
遠方視力 |
◎ | ◎ |
|
中間視力 |
◎ | ◎ |
|
近方視力 |
◎ | ○ |
|
スマホ・読書 |
◎ | ○ |
|
夜間運転 |
○ |
◎ |
|
ハロー・グレア |
やや多い |
少ない |
|
見え方の自然さ |
○ |
◎ |
多焦点眼内レンズに絶対的な正解はありません。
眼鏡への依存を減らすことができる一方で、光を複数の焦点へ振り分けるという構造上、ハロー・グレアなどの光学的な副作用を完全になくすことはできません。
現在の医療技術では、
「近くをできるだけ眼鏡なしで見えるようにすること」
と
「見え方の質や夜間の見えやすさを保つこと」
の両方を100%実現することは、まだ難しいのが現実です。
だからこそ大切なのは、「どのレンズが一番良いか」ではなく、
「ご自身がどのような見え方で生活したいか」
を考えることです。
老眼鏡をできるだけ使わずに生活したいのか。
夜間運転やコントラスト感など、見え方の質を最優先したいのか。
その答えは、患者様一人ひとり異なります。
当院では、レンズのメリットだけをお伝えすることはありません。実際の見え方や自院での経験、そしてデメリットも含めて丁寧にご説明し、患者様のライフスタイルに合わせたレンズ選びをご提案しています。
白内障手術は、単に濁った水晶体を取り除く手術ではなく、これから先の10年、20年をどのような見え方で過ごしていくかを選択する手術です。
当院では現在、PanOptix ProとPureSeeを中心に多焦点眼内レンズをご提案しています。その他の眼内レンズについても、ご希望や適応に応じてご相談いただけます。
患者様にとって最適な見え方を、一緒に考えていきましょう。